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2026.04.28
MOM FoR STAR で「救う」のではなく「仕組みを作る」。沖縄課題の解決に向けて

5年前、ひとつの「希望」から始まった「MOM FoR STAR (マムフォースター)」。「DESIGN BEYOND」をビジョンに掲げ、デジタル領域を中心としたサービスデザインを提供するフォーデジットのCEO田口さんと、沖縄から対話と共創の場を生み出すうむさんラボの代表 比屋根さん。異なる背景を持つ2人が、なぜ沖縄のシングルマザーの現状に向き合い、どんな「リアル」を築いてきたのか。
2人の対話から見えてきたのは、単なる就労支援ではない、沖縄の未来を根底から書き換えるための「持続可能な仕組み」でした。

沖縄の「構造的課題」と向き合った5年間
田口:僕らが沖縄でこの活動を共にするようになって5年が経ちました。当時の僕は、沖縄に対して「旅行で行く楽しい場所」というイメージしかありませんでしたが、5年前比屋根さんが話された「子どもの貧困率」や「非正規雇用率」、そしてその背景にある構造的な問題を聞いて、「何とかしなきゃ」と動くきっかけになりました。
比屋根:MOM FoR STAR が始まった5年前は、メディアでも子どもの貧困やシングルマザーに関する話題が注目されてはいましたが、当時はまだ補助金やNPOの活動に頼っていました。当時、沖縄の社会課題を自らの手で解決しようと具体的に行動している企業は、まだまだ少なかったのではないでしょうか。

田口:確かにそうですね。僕自身もそうでしたが、アンテナを立てて初めて、その裏側にある深刻な事実に気づくという状態でした。
比屋根:そうなんです。本当に深刻なのは、数字そのもの以上に、日常生活のすぐ隣にありながら認識されにくい問題が構造的に放置されていて、社会全体が向き合えていなかったんですよね。自分自身もそれまで身近なところで「貧困」を感じることはなくて。
田口:だからこそそういった気づきを得られたことで、何かを始めるきっかけになりました。それから5年経ち、比屋根さんの沖縄での活動も広がり、少しずつ変わってきたように感じます。
比屋根:はい。MOM FoR STAR のように民間企業からも自ら解決しようとする企業が出てきています。ただ利益を得るだけではなく、社会にインパクトを出さないといけないんじゃないかと考える企業が増えてきたのではないでしょうか。
母の背中がもたらした子どもの変化
田口:MOM FoR STAR の活動の最初の1年目は、本当に手探りでした。1年目に5人の方に入っていただきましたが、シングルマザーと言ってもそれぞれ背景が全く違う。「社会貢献」という言葉でひとくくりにしてラベリングしても、全然簡単じゃない、というのが最初の感覚でした。

比屋根:そういった現場での試行錯誤があったからこそ、今がありますよね。
田口:ITスキルを教えるにしても、最初はWebサイトの修正という仕事でしたけど、今はノーコードやAIもあり、仕事をやるにしても覚えてもらうこと自体が変わっていっています。僕たちもやり方を改善していく中で、メンバーの皆さんにも確実な変化がありました。MOM FoR STAR を通じて経験を積み、企業に就職した方もいますし、フォーデジットの業務でも、できることが確実に増えていて頼もしい存在になっています。
比屋根:実績としても顕著ですが、一番感動したのは、彼女たちと子どもたちの「心の変化」ですよね。
田口:それは僕も同じです。印象的だったのは、あるお母さんがパソコンで仕事を頑張ってる姿を見て、それまで家事も手伝わなかったお子さんが、自分で部屋を掃除し、ご飯を炊いてお母さんの帰りを待つようになったという話もあります。お母さんの「挑戦する背中」が、子どもを変えるきっかけになったんだなと。
比屋根:お母さんが頑張る背中を子どもが見る。それが一番の教育だし、次世代の希望に直結する。MOM FoR STAR を始めて良かったと思える瞬間ですね。そんな子どもたちが将来、すごいエンジニアになったり、難しい大学に進んだりとなったら素晴らしいことですよね。

田口:比屋根さんは、人財育成プログラム「琉球frogs」の活動のサポートも長く続けていますよね。具体的に動いている人の存在は、僕にとっても大きな勇気になります。
比屋根:2008年にスタートした琉球frogsも、まずは小さく始めてみようという原体験からでした。シリコンバレーに行くと、10代20代が世界を変えようと動いている。一方で沖縄の中では、どうしても県外に行きたくない、安定したいという志向が強い。その殻を破るために、シンプルにシリコンバレーに送って肌で感じてもらう。そこから始まったんです。
田口:その若者たちへの刺激と、MOM FoR STAR のようなお母さんたちへのエンパワーメント。こういった活動が繋がって、沖縄全体の空気が変わりつつありますよね。
比屋根:まさに支援が「点」から「線」、そして「面」に広がりつつあります。かつては孤軍奮闘していた活動が、今では企業や行政、そして当事者たちが横にも縦にも繋がり、ひとつのプラットフォームになりつつあって。
田口:とはいえ、ようやくスタートラインに立てた感覚です。2026年の今、さらに具体的に進めたいのが行政との連携です。地域の課題と行政を互いに支えられればいいなと思います。あとは、横の連携も広げたいです。単なる支援対象としてではなく、ママさんたちに仕事を頼んでもらったり、ステップアップしたい時に受け入れてもらえるような状況を作りたいです。

持続可能性のための「減らないお金の仕組み」をデザインする
田口:5年活動してきて確信しているのは、「良いことだから」「世の中に必要だから」という想いだけで継続できないということです。続けたくても、資金を出す側の業績が悪くなれば止まってしまう。そんな不安定な形ではなく、活動の持続可能性を担保する仕組みが必要です。
比屋根:それは本当に大きな課題ですよね。他の団体でも、やってみたけど1年ほどで続かなくなることも少なくありません。
田口:なので、MOM FoR STAR の中に、ある種の「資金プール」を整えたいと考えています。拠出した資金が消費されてなくなるのではなく、小さくても良いので運用して「減らないお金」として持ち続ける。その運用益を活動資金に充てていくような、座組みを作っていきたいんです。さまざまな参考事例はありますが、やっぱり活動に合わせて考えていかなければならない。
比屋根:いわゆる「エンダウメント(基金)」の発想ですね。私はそのために、いろいろな性質のお金を混ぜていくことも重要だと思っています。MOM FoR STAR のような民間のプログラムと、もっと重い課題を抱えた福祉的な領域、そして行政。行政も単独の事業としてではなく、これらをひとつの社会構造として捉えて、官民のお金を組み合わせて立体的に解決していく。そういうことができると、さらに課題解決が広がっていくと思います。
田口:最初から行政を巻き込んだり社会的な座組みを考えてもやっぱり難しかったと思います。ゼブラ企業やペイシェントマネーといった言葉が一般的になったこともあって、僕たちの話も理解してもらいやすくなったかもしれません。

比屋根:そうですね。こういう社会課題に向き合う事業は、決して短期間で答えが出るものではないと感じています。最初の3年で種を蒔き、次の3年でようやく芽が出て一本の苗木へと育っていく。そうして目に見える形になった今、ようやく多くの人が「自分も一緒に育てよう」と集まり、企業の枠やセクターを超えた連携や共創が加速し始めるのだと感じています。MOM FoR STAR はまさに今、その「広がり」のフェーズへと変わる重要なタイミングなのだと思います。
大人が頑張れば、子どもは未来に希望を持つ。
田口:比屋根さんが訴えている「株式会社沖縄県」、MOM FoR STAR などの活動を含めて、比屋根さんはこれからどんな未来にしていきたいですか。
比屋根:お母さんたちだけでなく、その子どもたちにも夢を持って自らの可能性をどこまでも広げ、道を切り拓いていけるような、そんな未来にしたいです。シングルマザーを支援しつつ、その子どもたちが多様な大人の多様な生き方に触れることで、子どもたちの本来持っている可能性が引き出され、地域全体に豊かな変化をもたらす原動力になると思います。5年、10年経ったときに、かつての子どもたちが希望を持って人生を楽しんでいれば、沖縄の未来は必ず明るくなります。
田口:僕も子どもたちが夢を持って生きられるのは本当に大事だと思っています。僕はこの活動自体が「地域の社会課題解決」という特別な響きで語られなくなったら成功なんだろうと思っています。大人が頑張る姿を見て、子どもが未来に希望を持つ。そんなシンプルなことが当たり前に浸透した社会を目指したいですね。
比屋根:MOM FoR STAR 立ち上げときに田口さんがおっしゃった「クリエイティブの力で明るくやっていきましょう」という言葉が、今も印象に残っています。社会の「重たい課題」として扱われる層が2割存在したとしても、そこに慈悲感ではなく「MOM FoR STAR ってワクワクするよね」というポジティブな空気が広がっていくことで、その2割は支援される対象ではなく、本来持って生まれた輝きを取り戻し沖縄の未来を明るく照らす希望の2割へと入れ替わる。そんな「ニッパチ(2:8)の法則」の逆転を目指したいですし、実現できると信じています。
田口:明るく、そしてやり続けることですね。これからも一緒に頑張っていきましょう。

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