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2021.10.22

NTTドコモ「ahamo」開発担当と語る、組織横断のサービスデザインプロセス

2021年3月にNTTドコモが提供開始したモバイル通信サービス「ahamo」。フォーデジットは、デザインパートナーとして開発プロジェクトに参画し、サービスデザインおよびWebサイト・アプリの制作に携わりました。リリースから約4ヶ月で契約件数180万件を達成した人気サービスは、いかにして生まれたのか――? 開発担当であるドコモの堀本さん、佐々木さんと、マーケティング担当の高山さんをお招きし、フォーデジットの末成、新田とのクロストークを行いました。

堀本 登 - Noboru HORIMOTO

NTTドコモ サービスデザイン部
アプリケーション開発担当 担当課長

佐々木 千枝 - Chie SASAKI

NTTドコモ サービスデザイン部
アプリケーション開発担当

高山 賢人 - Kento TAKAYAMA

NTTドコモ ahamo推進室
バリュークリエーション担当

末成 武大 - Takehiro SUENARI

フォーデジット 取締役COO

新田 望 - Nozomu NITTA

フォーデジット 執行役員

「ユーザーの声」を起点に。そこで初めて見えた景色

末成:プロジェクトの本格的な立ち上がりという意味では、2020年5月に、ドコモさんをはじめ、NTTデータさんやネットイヤーさんもご参加のもとで実施したワークショップが起点でしたよね。メンバーが一堂に会したあの日から、早1年半経つわけですが…。

 

堀本:今思えば、あのワークショップを実施できたことが、ahamoのその後を決定づけたと思っています。これまでは、新しいサービスの主管部が「お客さまの気持ちに成り代わったつもり」でサービスのあり方を検討するのが常でしたが、「実際にお客さまが考えていること」とのギャップが生じるケースが往々にしてありました。ところが今回は、スタート時点でユーザーインタビューを行い、さらにその後もヒアリングを重ねて、自分たちが立てた仮説の妥当性を確かめながら歩みを進めることができた。ユーザーを中心に据えたサービスデザインのプロセスを提供してくれたフォーデジットさんに感謝しています。それから、フォーデジットさんをプロジェクトに呼び込んでくれたNTTデータさんにも感謝しないといけませんね。

NTTドコモ 堀本 登さん

佐々木:私も同感です。過去に、社内にああいったプロセスを踏んでサービスを作り上げたチームは果たしてあったのだろうか…と思います。まずユーザーの声を聴いて、そこから参加メンバー全員で意見を出し合い、サービスのあるべき姿を考える過程そのものがとても面白かったです。

 

高山:そうですよね。プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、コンセプトをぶらさずやり切ることのハードルが高くなりがちですが、ahamoの場合は初めにきちんとユーザーの姿を描いて、それを関係者が共有できていたことが大きいのかなと。「ユーザーオリエンテッド」を貫いたままサービス公開に至ることができたという点で、画期的なプロジェクトになったと思います。

 

佐々木:高山さんが言うように、初めに「ahamoってこうだよね」という像を描けていたのは大きかったと思います。コンテンツごとに複数の部署に投げかけをする際も、その像を示すことでスムーズに意思疎通が図れましたし、そこから大きく外れる応答が返ってくることがなかったかな、と。

NTTドコモ 佐々木 千枝さん

堀本:たしかに。佐々木さんや私が所属するサービスデザイン部のほかにも、情報システム部をはじめ複数の部署が関わっていましたが、今回のプロジェクトには組織を超えた一体感があった。サービスデザインの取り組みだけでなく、ああいった雰囲気についても、今後ほかのプロジェクトに広げていきたい、いかなければいけないと思っています。

 

末成:今回、ビジュアル面でもドコモさんのブランドカラーである赤を基調にするのではなく、結構冒険をしています。その点については社内の皆さんからの反響はいかがでしたか?

 

堀本:おっしゃる通り、色使いも、イラストなどデザインのあしらいにしても、従来の当社のサービスにはない表現がahamoでは多用されていますが、ネガティブなコメントはまったくありませんでしたね。

 

高山:当社の場合、“左脳的”というのか、デザインの要素一つひとつにも意味を求めがちなところがありますが、今回は意味を問う以前に直感で「なんかいいよね!」と共感を呼ぶデザインが通った。その意味でも、画期的な事例になったと思います。

NTTドコモ 高山 賢人さん

若手メンバーに大きな裁量。ユーザーに近い価値観でジャッジ

末成:もう一つ、このプロジェクトの特徴だと思っているのですが、佐々木さんや高山さんを筆頭に、年次の若いドコモメンバーの方がとても活躍されていますよね。打ち合わせでも、マネジメント層の方たちが「○○はどう思う?」と、まずは若手メンバーの方に水を向ける場面がすごく多かった。堀本さんの「佐々木さんはどう思う?」は、延べ100回くらい聞いた気がします(笑)。

 

佐々木:そうでしたね(笑)。

 

堀本:やっぱりそれは、「Z世代のZ世代によるZ世代のためのモバイル通信サービス」を目指してスタートしたプロジェクトだったからですよね。意思決定の指針とすべきは、若手メンバーの考えだろうと。マネジメント層の役割は、持論を展開することではなく、彼ら・彼女らの考えをものづくりに直結させること。その認識は、私以外のマネジメント層のメンバーも当初から持っていたと思います。

 

新田:なるほど。「○○はどう思う?」の投げかけが、若手メンバーに対してあれほど頻繁に飛ぶプロジェクトは、私も初めてでした。

 

末成:そう、かなりレアな経験でした。要所要所でのジャッジが若手メンバーの方々に委ねられているからこそ、意思決定のスピードも早かったですよね。

フォーデジット 末成 武大

堀本:そこは、投げかけた先のメンバーが皆、しっかりした意見を持っていたからこそ、かもしれませんね。

 

高山:そう思います。佐々木さんをはじめ、「自分の主観を若年層のトレンドに変換した言葉」で語ることのできるメンバーが、プロジェクトの要となるポジションに複数いたんですよね。みんなしっかりしている(笑)。

 

佐々木:実を言うと、プロジェクトに参加した当初は、裏方的な業務を担当するつもりでいました。ところが、気付けば部署横断で数十人が参加する打ち合わせでファシリテーションをしたり、意見を述べている自分がいて…。先ほど堀本さんがおっしゃたように、ahamoが望ましい形でサービスインできたのは、部署間の一体感によるところが大きいと思っているので、そのための場作りに多少なりとも貢献ができたと思うと嬉しいです。裏方業務に閉じなくて良かったなと。

 

高山:佐々木さんの話で思い出しましたが、僕の場合はもともとマーケティング部のリサーチ担当として入っているので、プロジェクト序盤にコンセプトメイキングが完了した時点で、ahamoを離れる選択肢もありました。ただ、当時の上司が「ブランド名とかロゴとかブランドカラーを決めるのやってみたい?」と聞いてくれて。本来それはプロモーション部の担当になるのですが、僕も担当させていただくことになりました。その結果、サービスインまでずっとプロジェクトに伴走することができたし、現在はマーケ部から派生したahamoの専任組織でahamo一色の毎日を送っています。僕も、閉じなくて良かったと思います。

 

末成:すばらしいですね。そういえばお二人は、記者発表会コンビでもありましたね!

 

NTTドコモ 今後の料金戦略に関する発表会(NTTドコモ 公式Youtube)

とがることで高まるクオリティ、そして増大する波及効果

末成:さて、今回ahamoはグッドデザイン賞にも輝きました。プロジェクトの比較的序盤にドコモさんのオフィスへお伺いした際に、過去にドコモさんが受賞されたグッドデザイン賞のトロフィーが飾られていて、その前で堀本さんがぽつりと「ahamoでも獲りましょうね」とおっしゃったのが強烈に印象に残っています。何というプレッシャーのかけ方をされるんだろう、と(笑)。

 

高山:有言実行ですね!

堀本:そんなこともありましたよね(笑)。今回の受賞は、サービスを作り上げるために取り組んできたことへのご褒美だと捉えています。決して、賞の獲得が目的ではなく。ほかにも、いくつかの社外表彰をいただいていますし、外部から客観的にみて一定の評価を得られているのだと思うとやはり嬉しいですよね。 

 

末成:グッドデザイン賞に関して言えば、サイトの見栄えや使い勝手の部分だけでなく、どういったコンテキストのもとで生み出されたサービスなのか、というところまで加味されているはずです。サービスのコンセプト、実際のプロダクト、それによってもたらされる体験が総合的に評価された結果の受賞だと思います。

 

受賞公開情報:モバイル通信サービス [ahamo(アハモ)](グッドデザイン賞 公式サイト)

 

高山:Z世代をメインターゲットに設定して作り上げたサービスではありますが、「単身向け」かつ「オールインワンパッケージ」のシンプルさは世代を超えて刺さっていますよね。

 

末成:そうですね。リリース後のリサーチでも、30代DINKSからの評価がかなり高かったようです。コンセプトをとがらせた結果、想定以上に多くの層に響くものになったのかなと。

 

高山:きちんと刺さるからこそ、大きな広がりになっていくんでしょうね。今回、ドコモショップという大きなチャネルをあえて使わない選択をしたことも、功を奏したと思っています。すべてをオンラインで完結させる、という枠組みがあったからこそ、サイトやアプリのクオリティをあれほど追求することができた面もあるのかな、と。「ドコモショップでの対応」が選択肢に残っていたら、また違った結果になっていた気がします。ある意味、振り切った決断でしたが、コロナ禍を背景とした非対面の推奨という外部要因もあり、社内的にもスムーズに合意に至りました。

末成:コロナ禍という意味では、ドコモさんは開発期間中も基本的に全面リモートワークでしたよね。リモートによるやりにくさとか、逆にうまくいったこととか、何かありますか? 

 

佐々木:過去にない経験でしたが、結果的にリモートでよかったと思っています。拠点が異なる部署のメンバーと、毎朝夕のペースで対面で打ち合わせするのは現実的ではないですし…。

 

堀本:そうだよね。今回のプロジェクトは、そういう意味でもいい事例になったと思います。Face to faceじゃなくてもこれだけやれる、という。

 

末成:なるほど。当社としても、ドコモさんの会議がオンラインだったおかげで、普段そうした場に参加することが少ない若手のメンバーまで、議論を体感できたのが良かったと思っています。関係者のリアルな声を聞き、自分の耳で決定事項をキャッチアップすることで、プロジェクトへの愛情も自ずと高まるというか。メンバーにとっていい経験になりました。

リリース後も変わらず、横串のチェック体制で「あるべき姿」を追求

新田:僕は今回、ドコモさんと共同でDHQ(Design Head Quarter:プロダクトオーナー、各領域のUXデザイナー、テックコンサルタントからなる組織体)を設置して、プロジェクトを推進できたことに大きな手応えを感じました。複数の領域を横断的に精査するDHQが機能したおかげで、高いクオリティを保ちながら、サービス全体で一体感のある世界観を実現することができたと思っています。

末成:たしかに、今回DHQを発足させてプロジェクトを回したことも、特徴的な点ですよね。開発フェーズで手放すことなく、最後のジャッジまで関わらせていただける体制を築けたのは、オーバーな言い方をすれば奇跡的なことだと思っているのですが、こうした仕組みを受け入れていただけたのはなぜだったのでしょう?

 

堀本:当社内に、主管部にあたる組織がまだなかったことが大きいかもしれません。ある時点まではahamoの専任組織もなかったので、各領域、一両から四両まで編成されている中ですべてを見渡して「進行ヨシ!」の号令をかけるのは誰なんだっけと。横断的なチェック機能の必要性は初めからよく分かっていたので、DHQはぜひとも、という感じでしたね。おっしゃる通り、あまり例のないことだと思いますし、私も今回初めて経験しました。

 

末成:サービスインした後も、DHQも一緒に改善を重ねていますからね。

 

佐々木:そうですね。お客さまに使っていただく中で見えてきた課題の解消が今まさに進行中です。複数のチームが同時並行で動いているので、更改の頻度もかなり高いですよね。そんな中でも、DHQが機能することによって、サービスとしての世界観が損なわれたり、品質にバラつきが出ることも防げています。

 

末成:皆さんから見て、ahamoは順調に育ちつつありますか?

 

高山:いいかたちで育っていると思います。

 

佐々木:そう思います。社内での注目度もとても高くて、最近は同僚から「ahamoの時はどうやったの?」とサービスデザインの進め方について質問を受けることも増えました。あとは、「CX」というフレーズを社内で耳にすることも。ahamoの誕生をきっかけに、何かが大きく変わりつつあるのを感じます。

高山:そういえばワークショップよりも前の話ですが、堀本さんや佐々木さんへ初めてahamoの話をした時に、堀本さんが「ドコモは変わらなければいけないんだ」というお話をされていたのがすごく印象に残っています。その熱量が本当に高くて。今の佐々木さんの話を聞いて、会社が今後変わっていくための起爆剤としてahamoが作用し始めているんだなと感じました。

 

堀本:やっぱり、「お客さまが求めているもの」を知ることに手間暇をかけなければ、お客さまに受け入れられるものは作れないですよね。これまでは、自分たちが持つ技術や製品起点で発想していたけれど、もうそれでは通用しない。ahamoで実践したアプローチを、これからのデファクトスタンダードにしていかなければいけないと思っています。そんなものづくりが当たり前にできる状態を目指したいですね。もちろん、ahamoもここからさらに育てていきたいと思っています。

 

末成:僕たちは、ahamoを育てるプロセスにこれからも伴走し続けていきますので、今後ともよろしくお願いします。本日はありがとうございました!

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