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2026.04.20
NIKKEI Digital Forum in ASIA Sustainable Society & Solution Summit に登壇しました

2月25日、ベトナム・ハノイにて開催された国際フォーラム「NIKKEI Digital Forum in ASIA — New Economic Growth ~ Next Generation Power ~」に、取締役COOの末成武大と執行役員の田口雄大が登壇しました。
日本経済新聞社と日経BPが主催する本フォーラムは、「アジア発のデータ×デジタル革命で、世界をより便利に、豊かに」をビジョンに掲げ、日本とASEAN諸国の連携を深めるべく開催されたものです。政府・産業界のリーダーや専門家が集うなか、フォーデジットはJCBの涌井択也様、NTTデータベトナムの石井宏和様、Payooの照田大輔様、そしてモデレーターの日経BP勝俣哲生様と共に、「ベトナムにおけるデザインイノベーションと決済サービス」をテーマとしたパネルディスカッションに参加しました。
急速なデジタル化が進むベトナムにおいて、単なる機能提供を超えた「選ばれる体験」をいかに構築するか。日本でのMyJCBリニューアルにおける徹底したユーザー理解のプロセスや、ベトナム初の「キャッシュレス前提」の映画館となったイオンベータシネマの事例を交え、これからのアジアにおけるサービスデザインのあり方について議論を深めました。(以下敬称略)
ユーザーの「日常」を起点にしたサービス設計
セッションの冒頭では、JCBが展開するデジタル戦略に焦点を当て、ユーザーの行動様式にどう深く入り込むかが議論されました。
その象徴的な事例として挙げられたのが、日本国内における「MyJCB」アプリのリニューアルです。ここで重要視されたのは、定量的なデータだけでは決して見えてこない「ユーザー心理」の徹底的な深掘りでした。
田口(フォーデジット):
リニューアルにあたり、50人以上のユーザーに対して対面インタビューを実施しました。そこで浮き彫りになったのは、『ユーザーは機能の存在自体を知らないわけではなく、自分の日常の文脈と結びついていない』という事実です。
データ上の利用頻度が低くても、実は潜在的なニーズは別の場所に隠れている。ユーザーが日常のどのタイミングで、どのような期待や不安を持ってアプリを開こうとするのか。その『感情の動き』を捉え、機能の見せ方やコミュニケーションのあり方を再設計しました。単なる改善ではなく、ユーザーの生活動線に寄り添った設計へと転換したことが、結果としてビジネス成果に直結しました。
この「ユーザーの生活圏に自ら入っていく」という思想は、ベトナム市場における「Zaloミニアプリ」の戦略にも共通しています。
ベトナムで圧倒的なシェアを誇るメッセージアプリ「Zalo」内にサービスを構築した背景には、自社アプリのダウンロードという高いハードルを避け、ユーザーが日々使い慣れたプラットフォームに機能を溶け込ませるという合理的な判断がありました。
涌井(JCB):
ベトナムは日本以上にデジタル化のスピードが速く、モバイルが生活の基盤です。以前は富裕層向けサービスを電話ホットラインで提供していましたが、今の市場ではそれが逆に利用の障壁となっていました。 自社アプリを開発する選択肢もありましたが、あえて『ユーザーがすでにいる場所』であるZaloを選びました。認知・ダウンロード・ログインという壁を物理的に取り払い、日常のコミュニケーションの延長線上にサービスを配置した結果、利用率は電話時代の1.5〜2倍にまで向上しています。

3社の共創が実現した、ベトナム初の「キャッシュレス前提」映画館
続いて紹介されたのは、イオンエンタテインメントがベトナムへ初進出した際の新たな映画館モデル「イオンベータシネマ」の事例です。このプロジェクトでは、NTTデータベトナムがシステム開発、Payooが決済基盤、そしてフォーデジットがUI/UXデザインを担当。3社が上流工程から密に連携するパートナーシップによって、これまでにない顧客体験を創出しました。
本プロジェクトの最大の挑戦は、単なるデジタル導入ではなく、オペレーションの根幹から「キャッシュレス」を前提に再定義することにありました。
石井(NTTデータベトナム):
目指したのは、Webウェブサイトでの予約から現地のKIOSK端末でのチケット購入、飲食の注文に至るまでの一気通貫した体験です。ユーザーの利便性を最優先にしながら、同時に現場スタッフのオペレーション負荷をいかに軽減するか。この両立を追求した結果、最初から『キャッシュレス前提』で設計するという決断に至りました。設計段階から決済とシステムの整合性を突き詰めたことが、成功の要因だと思っています。
末成(フォーデジット):
日本だと、どうしても今あるオフラインの体験をデジタルに置き換えていく形になりがちなんですが、ベトナムの場合は、いきなり『新しいスタンダード』をそのまま提供できる。そこが大きな強みですよね。ユーザー側も、新しいテクノロジーや体験をフラットに、すごく柔軟に受け入れる準備ができている。
今回のプロジェクトで一番大きかったのは、スタートの段階から3社で『どういう体験価値を届けるか』というビジョンが完全に一致していたことだと思っています。システム、決済、デザインがバラバラではなく、三位一体で体験を磨き上げられたからこそ、リリース直後からキャッシュレス比率90%以上という、驚くような数字を達成することができました。

「機能」から「情緒」へ。即時性と体験がもたらすロイヤリティの未来
決済という「支払いの痛み」を伴う機能的な行為を、いかにして「楽しさ」や「喜び」というポジティブな感情へと変換できるか。その具体的な解として紹介されたのが、Payooのテクノロジーを活用したJCBの「HAPPY WEEKEND」プロモーションです。
ここでは、単なる値引きを超えた「体験のデザイン」が語られました。
照田(Payoo):
従来のキャッシュバックは忘れた頃に届くため、ユーザーがベネフィットを感じにくいという課題がありました。そこで、決済端末の機能を活用し、支払ったその瞬間に割引が実行される仕組みを構築しました。このリアルタイムな体験は非常に効果的で、ある店舗では売上が400倍に伸びるなど、圧倒的な反響がありました。
涌井(JCB):
週末にJCBを使うといいことがある、という『第一想起』を狙っています。単なる決済ツールとして機能するだけでなく、『週末が楽しくなる』という感情を喚起する。JCBのブランドコンセプトである『Japan Cùng Bạn(Japan With You)』を体現する体験を、デジタルの力で実現しています。
ベトナムの「スピード」と日本の「質」を融合し、アジアの新たな価値を創造する
ディスカッションの終盤では、ベトナム市場特有のスピード感と、これからのアジアにおける「デザインの役割」について、未来に向けた展望が語られました。
末成(フォーデジット):
7〜8割の完成度でもまずリリースし、ユーザーの反応を見ながら改善していくベトナム企業のクイックネスには、日本企業が学ぶべき点が非常に多くあります。一方で、市場が成熟するにつれ、今後は『量から質』への転換が不可欠になります。そこで、日本が長年培ってきたホスピタリティや、細部までこだわり抜くUI/UXのナレッジが、現地のニーズと合致したとき、非常に強力な武器になると確信しています。
田口(フォーデジット):
どれだけビジネスが加速し、テクノロジーが進化しても、ユーザーがどう感じ、どう使っているかという『原点』を忘れてはいけません。情緒的な価値を大切にし、それをビジネス判断の核に据え続けること。その姿勢こそが、アジアにおける真のイノベーションにつながると信じています。

今回のフォーラムへの登壇は、アジアにおける事業展開を加速させるうえでも、また現地の課題に対してデザインがどう貢献できるかを改めて考えるうえでも、非常に意義のある機会となりました。
ユーザー中心のサービスデザインを通じて企業のDX推進や新たな価値創造を支援してきたフォーデジットにとって、こうした未来志向の議論が交わされる場に参加できたことは、今後の活動に向けた大きな糧となります。
フォーデジットは今後も、日本とASEAN諸国の橋渡しとなり、デザインを通じて社会課題を解決するソリューションを共創してまいります。現地パートナーとの連携を強みに、アジアにおける新たな価値創造に真摯に取り組んでいきます。










